2019年9月25日水曜日

たまには技術的な問題をと「時間軸/位相のズレについて」考えます

最近、フェースブックで下記の様な書き込みが有りまして、
世界中のメンバーの方から数百のコメントが集まる熱い課題であることが分かりました。
これはスピーカー設計の部分的な問題提起ですが、ウッドウイルがどの様に考えているか
簡単に書いてみたいと思います。


  
マルチウェイスピーカーでは低中高各ユニットの奥行サイズの違いから、音の出だしの位置が違いまして、
リスナーに届く音にずれが生じると言う問題です。
アナログ的対策では各ユニットの音の出だし位置を揃えると図の様に正しく収まるという理屈です。
フルレンジユニットを使えばこの問題は生じませんが。

 9月11日の私のブログの最後に「この問題は後程」と
書いた直ぐの投稿でした。
機会を見て詳しく説明しますが、最近のデジタルチャンネルデバイダーには、電気的補正で時間調整を行い、
スピーカーに段差を設けずに解決できる手法が一般的になって来ています。







それでは下記の図面を見て皆さんは如何考えるでしょうか?

ピアノは演奏会では殆どが聴衆に対して直角に配置されているので低音弦と高音弦では1m以上も離れています。同時に鍵盤を叩くと単純化して考えれば低音弦の音は高音弦の音より遅れてリスナーに届きます。上記の解決方法を採用しますとかなり異端な外観形状のスピーカーになってしまいますね。
















音の発生源が一点で単独で有ればチェロの解決方法も納得できますが、
オーケストラの様な様々な楽器が演奏される場面ではどう対処したら良いか
判断に迷います。

我々はピアノとはそう言う特徴の持った楽器で有る事に不自然さなど感じていません。
音楽とはその様な物と捉えていますが、原理原則を追及するとその様な面も気になる
と言う方々も居られます。

ウッドウイルは研究部門では無く、お客様に音楽を楽しんでいただくスピーカーを
製作するのが目的ですので、この問題にはあまり強い関心を持っていません。
 何故にこの様な問題提起をするのか?音の出だし位置が違うと音楽を聴いていて、
どの様な不都合が有るのか?この一番大事な点についての議論は殆ど聞いた事が
有りません。技術的検証や解決策を熱く論じている事が大半です。

私はこの問題が有る事は承知していてテストも済ませています。
でも、それよりも大事な問題が有って、その解決で音楽を聴くのに大いに改善される
事が有る事を知っています。現在制作している作品の半数、今後製作する作品の殆どは
その対策を施した物になります。

スピーカー(オーディオ機器全体に言える)には色々な性能を求められますが、
ウッドウイルではお客様の嗜好に合わせる音色を選ぶのが基本では有りますが、
その中でもリアルに、自然に、誇張の無い様に、出来れば演奏会を再現出来れば。
試行錯誤しながら現在のウッドウイルが求めているのは一般的表現では、
音場再生に力を入れている様に思います。
再生装置の音を比較したりは殆どしません、音楽では無くて音その物に注目したりも
しません。音楽会で感じた感動をどうやって自宅で再現するか?

冒頭の「音の出だしの位置」を解決すればその一助になると考えますが、
それ以上にやるべき事もたくさんあります。
以前に納品したお客様夫婦の感想で、今夜は誰に演奏してもらおうかと話している!
物凄く心に届く言葉でした。
今後もこの路線で行こうと確信したのでした。







2019年9月11日水曜日

製造から15年ウイングスピーカー(100%無垢材ラウンドエンクロージャー)の化粧直し

ウッドウイルがオーディオの業界に広く認知されたきっかけとなった
ウイングスピーカー。stereo誌に1ページを割いて紹介れました。
約15年間、ウッドウイルの試聞室で多くのお客様に聞いていただきました。
今回、化粧直しをしてお客様のもとに嫁いで行きました。

15年と言えば電気製品補修部品の保有期間が5~9年です。
ウイングのエンクロージャーは山桜100%の無垢材ですが、
現在は木材の乾燥、構造的ストレスに馴染んで熟成して最良の状態に届いた所です。
今後、弦楽器の様に更に熟成が進む事でしょう。

響きの良い材料を使えば良い音になる!誰でもその様に考えますが、
無垢材は板材となっても生きていますので、温度/湿度/物理的ストレスで
常に収縮を繰り返しています。
その特性を考えて構造的に破綻せずに長期間安定して良質の音を届ける、
その工夫が有って初めて成り立つ無垢材採用のエンクロージャーです。

古いスピーカーのエンクロージャーがボロボロになっているのを知っています。
長く使う事を考えて材料選択していなかったり、発売時には気が付かなかった
経年劣化する素材が有ったりもした筈です。
ウイングの木材は数百年は持つでしょう、構造にも絶えます。
接着剤は有機物を含まないタイプで長寿命で有りながら、
音質を損なわない物を採用しています。

15年の間にツイーターは2回交換(何れもアンプ故障による損傷)しましたが、
アクシデント無ければ長く使えるタイプを採用。
ウーファーは3回交換(アンプによる損傷/日焼けによる色あせ/振動板傷付け等)、
これもアクシデント無ければエッジの劣化だけですが、
もっとも多い市販品はウレタンエッジ製で8年前後で劣化するのに対して、
ゴム系エッジなので20年は持つ事でしょう。

15年間に試聴室でレイアウトを変えたり、グレードアップを繰り返したりで
小傷が付きましたので古い塗装を取り、傷の修復を行いましたが、
構造的には全く異常無し、それを確認して再塗装しました。
再塗装して問題なく使える!そんな製品は他に無いのでは
ウレタン吹付着色塗装します。乾燥時間が長いので手間暇かかります。
業界標準はラッカー塗装です、乾燥が早く手軽ですが対候性が劣り傷も付き易い。

外から見るだけではこれらの内容を知る事は難しいです。
こんな説明も読んでいただければウッドウイルの作品の理解が進むかな?。
注)若干ページのレイアウトが乱れていますがブログ側のエラーです。

古い塗装をはがした様子(構造上の問題は有りませんでした)














同じく専用スタンドの塗装もはがします















新し塗装を行いました
 
ユニット等を取り付けて試聴している様子
嫁入り前の最後のお別れ









搭載するユニットとネットワーク部品
この説明は後程