2012年11月16日金曜日

総合グレード3を4への改良で音質向上

ウッドウイルのスピーカーには自ら「総合グレード」としてランク分けしています。http://www.lcv.ne.jp/~woodwill/enkuro-menu.html


お客様がどの構造方式がどの様な機能や音質を備えているかを容易に理解出来る為です。


 


バーチ合板積層曲げ合板使用ラウンドエンクロージャー(側板のみラウンド)は総合グレード3の作品です。側板がラウンドしていますが、バッフルと背板が平面で向き合う為に定在波が生じるので上位のグレードに及ばないのが理由です。天板と底板も平面で向き合いますが、オプションで対策が可能です。


総合グレード4はバーチ合板積層ラウンドエンクロージャー(側板/背板に加えてバッフル内面もラウンド)で、オプションを加えると対面する平行面無し→定在波極小→吸音材使用量極小→音質劣化せず→合板使用エンクロージャーの最高峰で最良の音質となります。


 


しかし、この総合グレード4のエンクロージャーの外観は個性的です。バーチ合板の断面は大変綺麗で積極的に利用する例が多いのですが、従来の木目を活かした外観とは違う為に馴染めない方も居られます。


その点では総合グレード3の構造では任意のつき板が張れますので従来方式の外観を活かす事が出来ます。


しかし音質がグレード3では悔しいですね。製作側もお客様も消化不良です。何故、背板もラウンドにしないのか??、曲面と曲面を接合するという構造上の問題です。加工や組立も難易度が高いのです。このシリーズを発表した時にはとても製作は無理だろうと断念していました。


 


不思議なもので難易度70%程度を幾ら繰り返しても変化は無いのですが、100%を繰り返すと、それ自体は100%から80%程度へと感じられる様に習熟する内にその難易度が下がって来ます。また、経験する内に新たな技法を見いだす事が出来ます。そんな訳で今迄は130%の難易度で手が出なかった物が、100%へと実現可能な領域へと下がって来た訳です。


これで総合グレード3の音を4に向上させ、外観も従来の木目を活かした物で対応できる事となりました。


 


では何故そこまでラウンドに拘るのか?再生音楽の最大の弱点は鮮度と考えています。装置の規模によっては低い領域への再生も可能でしょうし、その他いわゆる帯域をカバーしたり、低歪みや、音場補正したり、高品質音源を使ったりと今ではかなり進んだ機材を使う事が出来ます。


料理に例えてみます。素晴らしい調理法やソースに、素敵なレストランに豪華な食器、美味しい食前酒、ましてや美人と同席などでは夢心地!でも食材の鮮度が悪ければ全て台無しです。料理が美味しい訳がありません。


 


エンクロージャーを必要とする帯域のユニットで平行する平面が有れば定在波が発生します、これを無くす(消す)為に吸音材を入れます。定在波を含んだ音は吸音材内部に浸透して振動させ、音響エネルギーを熱エネルギーに変換して定在波を無くそうとします。しかし都合良く無くなるのは定在波だけでは有りません。エンクロージャー内部の全帯域の音(厳密には吸音材の持つ特性に影響されます)が無くなる(消される)のです。スピーカーユニットから出るエネルギーを吸収してしまって果たして良いのでしょうか?。


この様に吸音材を充填したその音は抑揚の無い抑圧されたまるでコンプレッサーでダイナミックレンジを狭められた様な音となります。どの様な素晴らしい装置を持ってしても最終段階の音の出口でそうなってしまったらリカバーする事は出来ません。これをウッドウイルでは鮮度の低い音と呼んでいます。


 


昨晩のアコーステック(PA無し)のjazz演奏でサックスの音に惚れ惚れし、バスドラムの低音に快感を得るのはその鮮度が高いに他なりません。


 


定在波対策を行うと上手い事に回析効果減少などの効果を上げる事も出来ます。点音源再生を目指し、定位や音場感を大事にされる方にもベストの方式です。ラウンドエンクロージャーに早くから取り組み、それもオーダーメードで一品製作している拘りが此処に有ります。


総合グレード4のエンクロージャーで生じた効果を2012年10月25日の「スピーカーの間に置いた物の素材を感じる」で書き込みましたが、どうやら音楽ソースの中には想像以上の要素が含まれていて、再生装置の品質が向上してくると見えてくる物が有る様です。その一部を体験したものでした。


 



2012年11月15日木曜日

ヨーロッパJAZZの頂点/メドウを聞く


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小さな田舎町でjazzのコンサートが開かれるので聴いて来ました。


このメンバーの予備知識は全く無し、北欧には優れたJAZZプレーヤーが多いので外れはないだろうと出かけた。パンフレットのヨーロッパJAZZの頂点medawが何故我が町に、ある日本のアーチストが召致したそうですが良く分からない。


jazzが好きでオーディオにのめり込んだ筈なのに最近は殆どコンサートに行かない。最近聞いたのはお客様でもあるjazzピアニストのお店でのライブも5,6年前の事、その前はドイツ出張の帰りに旅した北欧のコペンハーゲンやベルゲンでのjazzバーで聞いた程度と、些か情けない。


今日のコンサートは我が町自慢のコンサートホールを使っての演奏ですので、PA無しのアコーステックと言うのが嬉しい。演奏者から5mほど離れ、ステージ高さは胸より下のすり鉢状なので良く見えて良く聞こえます。


さて演奏の方ですが、ピアノ/ドラムス/サックスのトリオの構成です。ピアノは年配の一見気難しそうな紳士風ですが興に乗ると人柄でしょうか優しそうな音楽好きに変身です。ドラマーは若くやせ形で片言の日本語で賢明に説明してくれる気さくな人ですが、演奏中は求道者の様な風情。サックスは遠慮がちな静かな人でやはり人が良さそうです。


三人共にさりげない、飾らない、ごく普通の人達です。如何にもミュージシャン風とは違って違和感の無さがこれからの演奏の良さを期待させてくれます。


演奏は都会的な洗練されたものです。淡々とした演奏を聞いているうちにその世界に入りきっていて心地良く、静かに熱くなっている事に気が付きます。聞いているうちに思考停止状態になっている事が音楽に浸かりきっている、楽しんでいる事と思うので、そうさせてくれているこのメンバーの静かな力が、曲が進む程に浸透してきます。


ピアノは繊細でストイックなものからMJQのジョンルイスみたいに脇で淡々とリズムを刻んだり、ピータソンの様な存在感を出したり変幻自在です。


ドラマーはやはり繊細で出張った所が無いのにメンバーの中心にいて、曲によってはメロディーをリードしているのでは?と思う程です。とにかくアコースティックですので音が良い。コンサートホールの響きの良さをjazz演奏で再認識するとは以外でした。


シンバルのステックの使い分けた音色や各種の鐘の音色も綺麗鮮明。小さめのドラムスセットのバスドラの重低音?は何と心地良いか!、大太鼓を神社仏閣の境内で鳴らした時の様な低さと伸びがたまらないです。PAを通すとこんな音は絶対に出ないですから、これだけでも聞いた価値がありました。


サックスはと言うと、演奏技法が特殊なのか?と思う様な所が随所に。フルートの循環呼吸法の様な、直前に吐いた息でピストンを駆使した音を出して、次の息で別の音を出して重ねて続けて音を出す?専門的な事は知りませんが音がよどみ無く出て来て不思議で快適。そして音色が綺麗、解像度が高い?唇の動きがアンプの残留ノイズの様な、弦の演奏ノイズの様な感じでとして聞こえて来ます。こんな音は聞いた事が無い!演奏者の技、楽器の能力が高いのか、今迄は管楽器の音色の優劣には気が回りませんでしたが、影響が大きそうで、これも初めて実感です。コンサートホールの響きの良さ、アコースティック環境での新たな発見です。演奏は不快な所や気張った所が無くてとても心地良く熱くさせてくれる高度なものです。


曲についてはここでhttp://www.youtube.com/watch?v=enrMznIRCZE


2枚目の画像は昨年英国で大変評価の高かったと言うアルバムです「HECREC105」


解説記事は此処でhttp://makigami.com/makigaminews/2012/09/ecm.html


 


 


 


 


 


 



2012年11月14日水曜日

雪だ!


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今、雪が降り出した。


今年も季節にフェイントされてうろたえています。


こんなに早く雪が降ってもホワイトクリスマスにならない事が最近多いのです。


2012年11月14日 標高1078mの信州の高原にある我が家にて。



2012年11月12日月曜日

レコード芸術11月号に掲載される

2012年11月1日発売の音楽乃友社「レコード芸術」にウッドウイル製作の


スピーカーが出て来る記事が掲載されています。


説明するまでも無いとは思いますが、月刊誌であるレコード芸術はクラッシック音楽の新譜や関連情報を紹介する月刊誌です。姉妹誌でクラッシック音楽のコンサート情報を紹介する「音楽の友」があります。音楽の事は素人ですので両誌には大変お世話になっています。


紹介記事はウッドウイルの製作した質、量、共に過去最高峰の作品で、オーディオ.ライターの田中伊佐資さんに納めた「超弩級JBL38cmウッドホーン3Wayシステム」に関する氏が書いた記事です。


納品して4年以上が経過し、当時とは機材や室内環境も高度に進化した様子が分かります。


制作者としては定期的にお邪魔してその進化による音の違いを確認せねばなりません。


お客様に教わるのが一番の勉強になり、刺激を受けます。


レコード芸術:http://www.ongakunotomo.co.jp/magazine/recordgeijutsu/


超弩級JBL38cmウッドホーン3Wayシステム:http://www.lcv.ne.jp/~woodwill/JBL-Isashi-main.html


 



2012年11月11日日曜日

フィギュアスケートTV観戦記

フィギュアスケートTV観戦記


何度か書いたこの種の内容。
雪国生まれ、ウインタースポーツ好きなのでフィギュアスケート大会の
TV放送を良く見て楽しんでいます。


今シーズンのグランプリシリーズ(サッカーのワールドカップみたいなもの)は既に
中盤にかかっていて日本勢は大活躍中です。


此処では選手、成績、演技などの競技内容については触れません。
放送技術についての記載です。


先ずは、長野五輪の次の冬季五輪だった2002年米国ソルトレークシティー大会!
アイスリンク会場にはJBLのPAが設置されていて、
会場の音を拾ってTVで放映なのですが、それでも聞いているだけで素晴らしい音質で
大感激したのを覚えています。見ていると熱くなりました。
その頃には少しはまっとうな音の出る5.1chホームシアターを備えていたので
尚更だったと思います。
因みに長野五輪はパナソニックのPAで過不足無く普通に音が出ていました。


その後の2010年カナダバンクーバー大会は酷かった!
音質以前の問題で、演技用に会場に流す曲のピッチが不安定!
世紀の祭典でこんな事が有るのかと思っていたら、
次の日も同じ症状が出ていた!


2006年イタリアトリノ大会はこれと言って感じる事は無かった。
荒川静香が日本人初のこの競技の金メダルを取った事で浮かれていた。
開会式のルチアーノ・パヴァロッティが歌う
「トゥーランドット」の中のアリア「誰も寝てはならぬ」は圧巻だったが、
何と荒川の演技曲も同じだったというのが運命的です。


さてと今シーズンの音と映像の放送技術はどうでしょう?


.アメリカ大会: 音は普通、画はカメラが選手の動きを知らないので途中で選手が消える?
.カナダ大会 : 何か怪しい、全てに平均以下。
.中国大会  : 画も音も案外に良かったのだが、カメラアングルが固定化していて
           選手の動きに同調していない。
           画面に時々映る関係者の不愉快そうな表情で気分が盛り下がる。
.ロシア大会 : 映像はハイビジョン放送だが会場は暗くは無いのにシャッター速度を
           遅く設定しているのか?速い動きでは連続画像にならずにコマ送りとなる。
           深黒の洋服のディテールが表現出来ていたのには感心する。
           音声は酷いなぁ~、日本なら幼稚園の運動会でもあんな音にはならない。
           音が歪んでクラッシックの曲ではオケの構成が分からない程です。
           スケートのエッジの音(氷を削る音)では拾え無い選手が居る。 
           その音も動きについて行けないのでノイズなのか氷の音なのか不鮮明。


あら探しばかりしている様で気が引けるのですが、
例年の日本大会(今シーズンは未だ)での音は標準的で感動的でないが良く分かる、
(音の表情を的確に捉えていて曲の雰囲気を活かしている)。
映像品質は放送技術の最先端を走っているので文句の付けようが無い。
更に参加選手の演技内容をカメラ、音声スタッフが熟知しているので
その見せ場を的確に表現していて、その点でも最先端の表現力と思います。


でも初めからそうでは無かった。
変わってスキーのアルペン競技のダウンヒル大会、
(学生時代にかじっていたので大変興味がありました)
数十年前の日本で実施された大会の実況放送での事。
高速で遠くから近づいて来て遠ざかって行く選手を全長4Kmにわたって
数台のカメラで途切れなく追い続けます。
この準備だけでも確かに大変な作業でしょう!
でも観る側にとっては最初から最後まで小さくて平均的な姿で見せつけられると、
動きが分からず臨場感がまるで無い!数人の選手を観ただけで眠くなります。
競技その物は命をも賭けた危険でスリリングなものなのですが。
そのライブ感は全く感じられませんでした。
競技発祥の地の放映では見せ場に専用カメラを設置して
そのスピードやスリルを最大限に表現していて、
見る側も手に汗を握る様な最高に熱くなる放送です。
技術だけでは上手く表現出来ない事をスケートでも学んだのだろうと思います。


150秒~270秒の一人の演技をTVで独占してアップで映し出される競技を他に知りません。
シーズン中は同じ演技を繰り返し行うので、選手の出来は勿論の事、
会場毎の運営の優劣までも嫌でも分ってしまいます。


結局、何が言いたいのかと言いますと
.スタッフのモチベーションが最重要
.彼らをベストで働かせる様な組織運営が成されているか。
.ハードが劣っていては始まらないが、良くても使い手の技量の問題がある。


選手の技量を観る大会なのですが、運営の質をも見られる大会でも有るのです。
そんな事まで見えて来るのでとても面白いです。


ロシア大会の続きです。信じがたい事ですが、数人の選手を除いた他の選手の演技曲は歪んで霞み、観客の声援もエッジの音も殆ど拾っていない様です、嫌な現象を見てしまいました。


 



2012年11月5日月曜日

CO2削減活動を支援しています

ウッドウイルはCO2削減活動を支援しています。


小さな個人工房でも支援出来る仕組みがありますので協力させていただいています。


スピーカー作りには木材が必要ですが、支援している活動は製品となる樹木を入手出来る仕組みが目的なのでは無くて、樹木を保全する事によるCO2削減が目的です。


よく使うバーチ合板では売上の一部が植林に、又は伐採と植林が完全持続性を持たせた企業などの製品を使っていますので安心です。


無垢材では輸入出来る様な大規模の企業では植林等の環境配慮が義務づけられていますのでこれも安心できます。


国内産の桜や楢などの無垢材を切り出す企業規模は小さいのですが、所属する組合等で環境対策を実施しています。


気になるのは商品価値の高くない樹木が安易に大量に伐採され、その後の環境保全が不十分な部分です。


この支援では海外への植林です。地球規模で問題意識を持って取り組んでいると言えましょうか。何だか話が大きいですが、やる事はとても小さいのです。


木工の先生がよく言っていました。私達は木材を消費する最前線にいるのだから、資源を大事にせねばならないと。


無垢材で製品とする為には、使えない根元と樹冠を捨てて伐採し、枝を払い、皮を剥ぎ、製材する時に大量の大鋸屑を出し、割れや節、傷に汚れを避けて選別します。製品に使える部分は5割も無いのです。この様に作り、この様に使っているのです。肝に銘じなければなりません。


大鋸屑を畑に埋めて大量のカブトムシの幼虫が育ちます。木っ端は友人の薪ストーブで暖をとってもらいます。資源とエネルギーを大量消費する身ですから、もったいないの気持ちと地球に優しいを忘れない様にしたいと思います。