ウッドウイルのお客様の九割以上は一般の方ですが、
中には大学の研究用、メーカーの試作評価用、業務使用などもあります。
それらは大変に興味深い内容なのですが、公開する訳に行かないのが辛い所です。
最近、メーカーの試作評価用エンクロージャーを製作してその立ち会いチューニングを行いました。
一般のお客様にも人気のオプションですが、私がかなり細部まで気にしている様な微妙な音の変化の
全てを理解して頂くのは難しくとも、依頼者好みの音質に変わって行く過程を体験しながらの
音の変化は大変面白く夢中になって行いますので一日があっという間に過ぎてしまいます。
さて、メーカーの担当者の立ち会いチューニングとはどの様な経過をたどるか楽しみでした。
事前に仕様は確認済みで完成画像でも確認済み、作品の物理的な説明も質問も皆無。
持参された常用と思われる各ジャンルが網羅されたCDでいきなり試聴です。
現状の仕様と試聴結果を一曲一曲メモを取る官能評価が始まります。
チューニングが僅かに変更されてもその仕様と同じ様に曲を聞いてメモします。
それを可能性のある限り何通りも試行錯誤します。
その都度、各回の仕様と試聴感想メモを確認してベストな方向へと行きます。
音質調整用の補強板の僅かの移動で的確にその特性を言葉で指定されます。
嬉しい(分かっていますね)様な怖いような。
一般の方は自分が満足すればそれで完成ですが、物づくりをする側はそうは行きません。
仕様の変化が音の変化となる事を五感で認識する必要が有ります。
その認識を言葉、文章で表現する必要が有ります。
その変化からベストな方向を目指す為に具体的な方策を考え出さねばなりません。
その実現の為にシステム構成やパーツなどに置き換えてそれを実現させます。
官能評価も一般の方が経験を積んで獲得した評価方法とは違います。
聴能形成学と呼ばれる手法で、聴覚情報を獲得し、体制化する知覚、認知の仕組み、
音響情報の抽出・処理・記録・伝達を含む音響機器の最適化を行う。
知覚心理学、聴覚認知論、聴覚医学、楽器音響学、音響情報工学、音声情報工学など多彩です。
さて、その様なアカデミックなお客様に対して当方はどの様に対応しているのかというと、
物づくりの経験、試聴に使う音楽ソースの演奏家のコンサートに足げく通って音感を向上維持させる。
それが基本です。今までの趣味としてのオーディオ経験(40年以上)や職業上得られた音楽体験(20年)も
役立っている事と思っています。それに何より音楽が好きでオーディオが好きです。
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