2012年9月21日金曜日

MDFの音質











































ウッドウイルの活動初期の頃はMDF材のキットや低予算でのエンクロージャー製作には
MDFを多用していました。

そんな経験の中からMDF材の音質について疑問を持ち初めたので、
最近では試作用(構造やデザイン確認、データ取得用)など
音楽を聴く為の用途以外の限定で使って来ました。

今ではエンクロージャー材についての情報が豊富になった事や
ユーザーの目(耳)も肥えて来て、
最近ではMDF材で製作依頼される事は殆ど無くなって来ています。

そんな背景の中でのある進行中の作品製作での感想です。

ヴィンテージ物の20cm口径フルレンジの製作を依頼され(上記、下の画像)、
先ずは適当な試作用のエンクロージャーに入れて測定、データー収集を行います。

その試作用エンクロとは名の知れた名器と言われたスピーカーシステムの
ユニットやネットワークを外したエンクロージャーです(上記、上の画像)。

このエンクロージャー材は当時は未だ存在しなかったMDF材では無く、
今で言うパーチクルボード(木質小片と合成樹脂接着剤を混ぜ熱圧したもの)を使った物です。
感覚的には木材と言うより樹脂材と言うイメージで、
例では包丁の柄が木材なのに堅く丈夫で水に強いのは樹脂を含浸させているからです。
硬いのは接着剤の成分です。

堅くてある程度強度が有りますが内部損出は少ない物です。
損出が少ない=良い。
そうではありません、内部の音響エネルギーが適度に減衰させる為には
損出が大きく有らねばなりません。

そのエンクロージャーのバッフルをMDF材で二重に補強して本体側全体を32mmにしています。
多種のユニット取り付けの為に更にサブバッフル18mmを加えています。
オリジナルには補強材は全く有りませんので適度な補強も加えてあります。
音質/音色は考慮せずに単に不要振動等のノイズ発生を防いでいます。

この様に改造したエンクロージャーで測定等を行う訳ですが、
その過程では音楽を流したりも当然します。
この試作エンクロージャーに入れたヴィンテージ物のユニットからはどんな音が?
やはり少しは期待が膨らみます。
果たして出て来る音は?先ずは当初目的の測定を続ける事にします。



作品が完成してユニットを載せ替える前にもう一度、試作機で音を出してみます。
音の広がりが無い、全帯域で音が曖昧なので締まりの無い低音に透明さが欠ける中高音。
高域も伸びていない、試しにツイーターを追加するが高音が鋭くなるだけで逆効果。

そんな時には来客が有る物で、断りを入れながら聴いていただくが、皆さん沈黙します。
評価出来るレベルに達していない。
何故こんなシステムが此処に有るの??と目が言っています。

さて完成作品に載せ替えて聴いて見ます。
補強(強度では無く不要振動対策です)と若干の吸音処理(定在波対策では無く共鳴対策です)。
1,2週間かけて基本的な音の絞り込みが出来て来たら、
今度は音楽鑑賞モードに切り換えて(思考回路も)聞き始めます。

音場の広がりが明確でコーラス隊が勢揃いしています。
低音の明瞭度も出て来ました。
女性ボーカルでは中には音像が大きい物が有りますが(20cm口径ですので)
ほぼ等身大で聞こえます。
高音不足は解消しています、流石にヴィンテージ物と感じさせる音色にうっとりします。

どうも人間の音の捉え方は、
低音が豊かに出ていても、そうでは無く高音が足りないと感じる様です。
もし高音が足りないと感じたら低音が強すぎるのではと疑問を持ってみたら如何でしょうか。
逆に高音が強いのなら低音が弱いのかも知れません。

足りないのか多過ぎるのかの判断が最重要です。

もしその豊かすぎる成分の品質が悪かったりすると対策は経験からかなり難しくなります。
試作エンクロでツイーターを足しても逆効果になったのがその一例です。

子供の頃に見た「ひょっこりひょうたん島」での思い出ですが、
ドンガバチョが水不足を解消しようと海水から水を作ろうとするのです。
塩辛いので砂糖を入れます、入れ過ぎて甘くなり塩を追加します、
それを延々と続けてお腹を壊して倒れると言う話ですが、
先程の音質に対しても同じ事が言えるのではと常々自分を戒めていています。

足すのでは無くて不要な物を引いてみる。
そうなんです、MDF材や粗悪な材料でエンクロージャーを製作すると、
エンクロージャーその物から不要な物がいっぱい音に付加されてしまうのです。
この不要な物は取り除く(引く)事は出来ないのです。


この新作は近々紹介予定でいます。








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