2013年9月15日日曜日

小林聡美「めがね」 /マンドリン「横内の花子」

色々なジャンルにまたがる様なつれづれのお話しです。
よろしかったらお付き合いを。

小林聡美の「かもめ食堂」が気に入ったので「めがね」も録画してあったのを
忘れていて、やっと見ました。

かなり前に井上陽水の音楽番組で小林聡美がゲスト出演していた。
大して気にしていなかったが、やはり女優だけあって綺麗で魅力的。
別番組でインドでのロケで飛び入りで現地映画の主演女優役にトライ!
監督が本当にインドで通用するから残りなさいと!多分お世辞とは思うが、
全ての要素を詰め込んだ幕の内弁当みたいなインド映画での役をこなすのは、
素人目にもかなり大変そうで、もの凄いプロ根性に感心々。
昔、出張時に現地で観た事があります。

そんな訳で「かもめ食堂」を観て、次は「めがね」を観ようかとなりました。
またまた別番組でアイルランドだったかのマイナーな山を登山する紀行番組を見た。
厳しい気候の中での振る舞いがとても自然でこれも気に入ったのでした。

「めがね」は何かの機会に観ていただく事にして、映画中にマンドリンが出て来ます。
観て聞いていてある人を思い出しました。

通称と言うかブランド名というか「横内の花子」さん。
国内に数人しかいないマンドリン制作者、でした。

初めての出会いは長野に越して来て勤めていたある日の会社での事です。
周りが森の会社なので我が儘を通して1Fの窓際が私の席でした。
有る時に会社にはそぐわない風体の男が建て屋の外をうろついています。
そして何故か私の席の窓に来て話しかけます。
この会社は何をやっているの? 一見するとペンションみたいな建屋でしたので。

電源装置を制作していると言うと、自分の励磁形スピーカーユニットに使える物は
有るかといきなり振って来ました、そして有りますよと。
会社の他の人は私達の会話を怪訝そうな目つきで伺っているのでした。
それから10年以上経った有る時に偶然に再開する事となります。

ウッドウイルを開業してしばらくしてから楽器の構造を勉強しようと近所の
ヴァイオリン工房に出かけて行きました。その方について詳しく話すとまた長く
なりますので、またの機会として、とにかく近くにオーディオに拘った人が居る
との事で、誘われて会いに行くと何とあの時の人、彼が「横内の花子」さんでした。

ヴァイオリン工房の方とは手持ちのチェロを調整していただく等のお付き合いは
有りますが、「横内の花子」さんとは深くお付き合いをする事となりました。
工学を志し、企業で働いていた頃の私にはおそらく全く理解出来ないタイプの、
お近づきになる事も無いタイプの方でした。

工房は開設してから一度も掃除をした事は無いのでは?と言う個性的なものでも、
マンドリンは綺麗で精緻で、試し弾きをする音色も独特の哀愁を帯びて、
何度も何度も聞かせていただきました。
その時の音色が「めがね」を観ていて思い出したと言う訳です。

彼の自宅に設置してある直径2メートルは有る朝顔形のフロントホーン(自作)と
オールJBLの2.1ch/3Wayシステム。
吹き抜けの天井コーナーからつり下げられて、
リスニングポイントに狙いを定めています。
10cmも頭が動くとスイートスポットから外れてしまいます。
身を沈める様なフルリクライニングシートは上向きにセットされています。
そこから湧き出るワーグナーの響きはそれはそれは凄い...
オーディオの法則は無視、感動的な官能的な音なのです。

その部屋にある名曲のCDを随分聞かせていただいたものでした。
年配の方でしたが純粋で無垢で芸術家と言うのですか、
若い頃は前衛舞台の演出家兼俳優、マンドリン製作の修行を兼ねて
演奏も練習してコンテスト入賞経験も。

エンクロージャーの不要振動やコンディションを見極めるタッピングと呼ばれる、
指でコツコツ叩いてその反応と音を感じる手法を磨き上げるのも彼から習いました。
理論的で物理的評価に対して、官能評価と言う判断基準の何たるかを
教えていただいた様にも思います。

ウッドウイルの代表作「ウイング」の性能を私が判断つかない頃に、
私の作品で唯一良いと評価していただき、
私自身が実感したのはそれから3年程経ってからでした。

彼の晩年、遺作となる作品製作中に「天使が降りて来た」と言っていました。
そんな馬鹿なとは思いませんでした。
そんな事も有るのかも知れないと思える様なそんな気がしました。

あのマンドリンの曲線を造る構造と直径二メートルの朝顔形フロントホーン、
スピーカーエンクロージャーのラウンド構造などは単純かなと思いますね。
エンクロージャーの要求は他に有るとは言え、未だ未だと強く思いますね。


「めがね」の舞台は綺麗な珊瑚の海です。
海が浮いて見える程のエメラルドグリーン、海に突き出した塊状の溶岩など、
見覚えのある景色が広がります。
映画の最後に波止場が見えて来ます。
そこは沖縄本島から鹿児島方面に向かう大型フェリーは接岸出来ずに
小型船に乗り換えて上陸する場所でした。
そこだけ波が荒く、小型船から手などを船外に出すと岸壁に叩きつけられて
大変危険で、仲間が係から酷く怒鳴られたあの思い出の波止場でした。
もう35年以上前の出来事です。


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