2013年2月1日金曜日

エンクロージャーの響き その2

さてこの掲題の続きです。

ウッドウイルで製作した今迄の作品で質、規模共に最高峰に位置するのは
「JBL1500AL用エンクロージャーとウッドホーン」です。
http://www.lcv.ne.jp/~woodwill/JBL-Isashi-main.html

38cm用エンクロージャーをラウンド構造で、しかもハードメープル無垢材100%、
中域のウッドホーンは市販品を凌駕するサイズと仕様で同じ無垢材。
正に超弩級のスピーカーシステムです。

なぜこのスピーカーの製作を依頼されたか!
依頼者の田中伊佐資氏は最近のオーディオ誌を見れば
恐らくは半数程の各誌で記事を寄稿しています。
特にジャズ関連のソフトについては造形が深いので記事も多い様です。

この作品を納める前までは高品質で大規模なエンクロージャーも
製作している国内唯一と言われるメーカーの品にJBL1500ALを
納めていましたが、そのエンクロージャーの

* 共振して音が汚れる音には我慢出来ない * と叫んだとか!

叫ばなかったにしても裏板を外した強制背面開放型にして、
最低域の減衰を我慢しても中低域を活かしたいとの苦肉の策で使用していました。
そうすれば幾らかは不要共振が減ります。
受注してから氏のリスニングルームを拝見しに行きましたが、
なる程、背面開放型にした理由が良く分かりました。

ジャズであっても女性ボーカルの優しい甘い声に、
クラリネットの木の温もり、
ウッドベースの弓の響きなどはソフトで感じ入りますが、
そこはやはり、ドラムの皮の張り具合が見える様な解像度に
体が震える様なベース、つんざく様なペットやサックスの音色は
柔な焦点の定まらない様な音からは望むべくも無いのです。

そうなんです、前回お話しした「項目5.不要振動」の影響は
システムに計り知れない程の音質の劣化を来します。
どんなに良いハイレゾ音源でも名器のアンプを使っても、
又はスピーカーユニットをグレードアップする様な試行錯誤しても
改善する事は出来ないのです。

JBLのハイエンド機、ヒマラヤの名を冠した数機種が有りますが、
冒頭の作品の音に比べれば大出力時に音が暴れ出すのが分かってしまいます。
私の尊敬するメーカーが優れた物を作れない筈がありません!
要はコストです、資材費に製造コスト、メーカーの辛い所です。

何度も書いて来たJBLランサーL101、
最近、また中身を見てみますと、残念ながらこのコストの影響からは
逃れられないとまたもや考えさせられます。
あの若き頃に心を鷲掴みにされたスピーカーでもこうであったかと。
あの感動を得る為にいつかはウッドウイル版のL-101を作ろう。

開業以来多くの既存や当方製作のスピーカーの音を聴いて来ましたので、
「項目5.不要振動」を考えると良質の材料を使う事を優先します。
既にノイズが多く解像度の劣るMDFは余程強くお客様に言われない限りは
使う気にはならなくなってしまいました。

そんな事をベースに仕事に取り組んでいる中での疑問です。

MDF(柔らかく内部損失大)や
パーチクルボード類(木材的な堅さでは無く樹脂に近い特性)、
ラワン/シナ合板などの表面材以外は内部心材に使われている材質不明、
これらの良質では無いとウッドウイルが考える材料であっても
エンクロージャーを響かせて音を良くしている、
この様な事を良く聞きます。

バーチ/アピトン合板などの良質な合板使って、
更には集成材や100%無垢材などの最良の材質を使って
響きを効かせて音を良くしている。

これらの材料の品質の差がありながら、官能的評価ではどちらも
エンクロージャーを響かせて音を良くしていると言います。

恐らくは、いや絶対にそこには明らかな音の差、音色の差、
響きの差が存在していると思えるのにです!

その様に考えているのですが、そこは官能的評価の辛さです。
製作担当者、又は設計者やチューニングを行う者の感性的表現に委ねているのです。

その点から考えますと「物理的検証」が真に音質の良い
スピーカー、エンクロージャー製作に有効に働くのではと考えます。

a.エンクロージャーの不要振動の無い音
b.不要振動成分だけの音(これが要)
c.aとbを合わせた音(現実のスピーカー)
d.更にはbを自在にコントロールした音

こんな事を実現できればと考えています。
この書き込みはしばらく続くかも知れません。
今は考え方などを徒然に述べているので文章中心ですが、
後半は出来れば何かの具体例を示す事ができればとも考えています。

皆様の中でスピーカーシステムの不要振動に悩んでいる方が居られましたら
ご一報下さい、実例として取り組めたら興味深いと思います。






0 件のコメント:

コメントを投稿