2011年4月22日金曜日

視覚と聴覚と痛覚の戦いBy入院生活-1

昨年続いた大物製作で肩を痛めて手術、入院生活を余儀なくされた。


ここでは入院生活をどの様に過ごしたかについて触れてみようと思います。


痛みで眠れぬ夜を過ごした方法を思い出しながら書き連ねてみようと言う訳です。


 


1ヶ月以上の入院予想だったので事前に小説、技術書等の書籍と新しいアプリケーション


他多数。各種ジャンルの音楽CDやBS、ハイビジョン放送で録画したブルーレイの音楽番組や


映画の類に購入したままの映画ソフト等々を大量に準備しました。


特に日常的に試聴に使う楽曲は大体決まっており、それもさびの部分だけを聞く事が多いの


で、この機会に交響曲などはじっくり聞いてやろうと意気込んでいました。


 


入院前日にギリギリ届いたブルーレイ搭載ノートパソコンは何とJBLのAV仕様。


とにかく慌ただしくインストールして病院に持ち込んだ。


メールだけは送受信出来るように準備したが、病院ではLANにつなげられないのでUSBに


保存した受信メールを自宅から運んで来てもらい、翌日返事をUSBで渡して自宅から返信


すると言う、ハイテクだかローテクだか分からない手段で何とか業務に支障の無い様に


努めた。


 


さて入院中の時間の使い方の算段です。


手術が終わって後の入院生活は、起床(寝てないが)/検温/朝食/病室の掃除/


自主リハビリ+アイシング数回/昼食/リハビリ+拷問牽引(重りを付けて腕を吊る!)+


アイシング(数回)/検温/回診/夕食と続き、加えて数日おきに体拭きや洗髪などが


あって、暇かと思いきや2時間以上空く様な時間が案外に無くて、先ずは昼間に3時間以上


ある様な映画を鑑賞する事は諦める事としました。


更に、手術後には脇下に大きなパットを取り付けられて腕と肩を24時間固定させられました。


腕を動かせないのでマウス操作ができない、3DCGのアプリケーションの勉強も諦めざるを


得ませんでした。


 


大きな思い違いが有りました。手術する迄苦しんだ肩や腕の痛みは手術と共に消えるものか


と思っていました。リハビリの時だけ痛い思いを我慢すれば良いのかと考えていた訳です。


現実は違っていて24時間痛みが続きます。強い鎮痛剤を限度まで服用し、病院の早い消灯


で床についても、毎晩11時から1時には痛みで起きてしまう。


しばらく悶々としてから諦めて座薬を頼んで用いるのですがそれでも寝る事は叶わない。


これが毎日続くと言う状況でした。


 


24時間痛いので1日3回食後服用の鎮痛剤を何時飲むかが重要ポイントとなり思考は全て


そこに集中します。起床時が一番痛いので朝食後に直ぐ服用したい所ですがよく考えます。


なにしろ15分で効果が現れ3~4時間で効かなくなりますので、拷問牽引やリハビリの時に


薬が効いている事を優先します。任意の時間に服用出来る様にバナナなどの服用時に


胃に入れる食品を確保しておき、食事後の服用時間に拘束されない様に考えます。


メタボ腹になっているのでこれも良い機会と思い、上記以外の病院食以外は何も


食べませんでした。


1日1900Kcalきっちりの食生活です、退院時には2.5Kg減量となっていました。


見舞いからいただく菓子、果物類はもったいないとは思いましたが口にしませんでした、


ごめんなさい。


 


 


『読書による時間の使い方』


痛さを我慢している為か七面倒くさい技術書は読んでいると怒りぽっくなり殆ど読めません。


同じく翻訳本に良く有る形容詞を羅列した類の本も読みづらく読めませんでした。


難解な物、理屈ぽっくて展開の遅い類の本は受け入れられませんでした。


理屈抜きに展開の早い内容の小説で警察物や司法物のサスペンス、私の好きな潜水艦


物や大航海時代の戦力艦の戦記などは楽しかったですし、気持ちをほのぼのとさせてくれる


類の本も楽しめました。


●脳を理論立てて使う事を要求する類の本は痛みに耐えている状態では受け入れ不可。


 脳が勝手に想像を膨らませて別の世界に導いてくれる類の本は合格です。


 痛みを一時でも忘れさせてくれます。


 


 


 


『音楽による時間の使い方1.』


先ずは音楽/映画鑑賞ツールの説明。


ノートパソコンにはJBLの2.1chスピーカーと専用再生ソフトが入っているAV対応ノートの


DEL-XPS15。底面にサブウーファー付で4W×2+12Wの計20Wで凄い!効果有るのか?。


イヤフォンで聞きますから今回は2.1chには眠ってもらいます。画面は15.6インチ/WXGA/


1366×768/高性能グラフィックスボード/ブルーレイドライブ内蔵/CPU-Corei5等で


ハイビジョンソフトが鑑賞出来る環境です。


http://www1.jp.dell.com/jp/ja/home/notebooks/xps-15/pd.aspx?refid=xps-15&s=dhs&cs=jpdhs1&~ck=mn


妻のノートは壊れかけていて気が引けるのでXPS17のフルスペックを導入しました。


XPS15は仕事用だから余計なオプションは付けていないがXPS17はフルスペックです。


こちらにしておけば良かったと反省。


 


イヤフォンはカナル型インナーイヤホンのエティモテックリサーチのER-4Bを使います。


http://www.etymotic.com/ephp/er4-wrfy.aspx


http://www.etymotic.com/ephp/er4.aspx


音質はバランス良く質実剛健で余計な色づけをしていないので好感が持てます。


長時間の試聴でも疲労が少ないのは大いに助かりました。EQ等で詳細な音質調整が


出来るのも役立ちました。でも最大の特徴は遮音性です。場所柄、音が漏れては困るので


その点では満点です。-42dBの遮音特製です。計算上は外の音の聞こえ方が1/126になる


訳です。音楽を聞いていてナースに何度も叩かれました(そっとですが)。それ程に遮音性の


高いイヤフォンを装着している事が分からずに無視されていると思い、怒ったナースもいたの


ではなどと心配になったくらいです。でも音楽プレーヤーが2台買える価格は辛い。


 


このイヤフォンは携帯電話での音楽再生やワンセグにも使っていましたが、携帯での音楽


再生は音質が良くない。これはドコモの指示によるWindows Media PlayerでCDをリッピング


(読み込み)して専用ソフトで携帯に転送する手順によるもので、携帯とソフトの機能不足から


来る総合的な音質不良と考えられます。数年前にキムタクが派手に宣伝していた機種なので


すがね。ホームページに載せている試聴用のCD殆どが携帯の中に入っていましたが音が


悪くあまり聞きませんでした。


 


ドコモの最新XperiaではPCオーディオで扱う高音質ソフトが使えそうなので機種変更を検討


中です。綺麗な4.2インチの画面も作品を紹介するには充分で無線LANで料金を気にせず


ネットを見られるのも良い。とにかくJBLのAVパソコンの音が良かったので助けられました。


この文章を書きながらこのノートパソコンのスピーカーでブルーレイを視聴していますが、


スピーカーで聞いてもなかなかです。弦が綺麗でパソコン用外部スピーカーセットより中高音


は綺麗で、ハードメープル無垢の机に載せていますので低音も天板が助けてくれて


まずまずでした。


 


 


『音楽による時間の使い方2.』


読書や映像付き音源の視聴で目が疲れてくると次は音楽鑑賞です。同じ痛さでも日中と夜中


はでは気が紛れる為か痛さの感じ方が違いう様です。日中はそこそこ聞いて楽しむ事が


出来ました。現在継続購入中の「ウイーンフィル魅惑の名曲」全50巻の内25巻程を読破?の


目標はあえなく6巻で終わりってしまいました。


http://www.shogakukan.co.jp/wien-cd/about.html


ジャズから音楽好きになったのに近頃は遠ざかっていますが、DAVE BRUBECKの


テイクファイブやhttp://www.youtube.com/watch?v=BwNrmYRiX_o


キューバ音楽のCACHAITOのベースなどは大変気晴らしになり楽しみました。


http://www.youtube.com/watch?v=FggyNIsPJmU


 


**ちょっと話はかなり脱線しますが**


25年程前、国内外を出張で飛び回っていた頃、インドに2ヶ月程の出張に行きました。


カルカッタ到着の筈が嵐で国の反対側のニューデリーに深夜下ろされました。ジャンボ1機に


税関職員が二人、ボスが事務所にいてそのまたボスが更に奥にいてただ見ています。


数百人が夜中を通しての通関苦行の始まりです。私の前の婦人達はアクセサリー類を没収


されます、嫌なら賄賂です。一人一人にひと悶着が起こります。私は気が重くなります、


何しろ特大スーツケースを3個持っています。億単位のパーツを数万円と申告した物や、


特殊な工具類や当時で言うラップトップパソコン、私物の最新パーソナルオーディオ機器など


を持っているので係員との悶着は避けられないだろうと。特殊な機械や工具は通関ならん!


ここに置いて行け!。そこで、こんな時の為に準備してあった書類を見せます。


お国の国営企業の依頼で来ました。この荷物を私が期日迄に届けて工事しないと大変な事


になりますと書いてあります、職員はボスの所へ相談に。その間は通関停止、戻って来て駄


目と言うので次の作戦へ、ここの税関の責任者の名前を教えろ、後で国営企業から連絡が


来て相応の処置を行うだろうと、職員はボスの所へ、更に奥のボスの所へ、その間またまた


通関停止。私の後ろの人の冷たい視線に凍りつきそうです。


カースト制度のため上の位の者は下の位の者の仕事を手伝ったりしないらしいです。


 


戻って来て仕事道具は了解したとの事、やれやれお役人は疲れる。次は私物です。当時


発売されたばかりの最新のCDウオークマンとアンプ内蔵スピーカーとその付属品に音楽


CD数十枚が出て来て職員は???。これは何だと!、無理も無いのです、この製品は日本


以外には発売されていない、小型で高性能で高価な品でした。音楽を聴く装置で普通の市販


品で特別な物では無いと強調します。職員はここで開いて動かせと言い張ります。


かまはないが電源が要るし、時間がかかる等々要求すると、いいからここに置いて行けと言


われます。仕事場に持って行くからここには置いて行けない!。当然です、ニューヨークに行


くつもりがサンフランシスコに下ろされて帰りに取りに来いなんてね。又職員はボスの所へ、


職員も疲れたのか行列が進まないので根負けしてOKを出してくれて無事通関終了。


私だけで1時間は費やし申し訳なさと怒りの視線を浴びてさっさと逃げ出します。


 


そうやって苦労して持ち込んだ最新オーディオシステムをホテルのゲストルームに設置しまし


た。ここ迄は良かったのですが、当時出張に馴れた私でも初めて気が付いた事がありまし


た。出張先は後進国の中の更に最奥地にある国営工場なので、工場以外には自然以外に


何もない。お金を使う所も無い程です。仕事を終えて部屋に戻るとTVでインドの番組が砂漠


の中に見え隠れしますが、あとはレストランのウエイターに注文する以外人と会わない、話さ


ない、孤独なのです。


 


それが2ヶ月です。いつのまにか持参した各ジャンルのCDの中で女性ボーカル、それも日本


人以外は聞かなくなっていました。大好きな当時のナベサダも賑やかで楽しそうなのですが


一人では空しい。当時流行のアールクルーなんか聞こう物なら心まで凍り付いてしまいそうで


す。森山良子/高橋真梨子/竹内まりや/山本潤子/そしてユーミン。彼女達には本当に


お世話になりました。癒されました。


●この孤独という感情はある意味、心の痛さでは無いかと思うに至りました。楽しい曲、クール


な曲、ストイックな曲など日常と違う環境では聞く事に耐えられない種類の曲が有る事に気づ


きました。


 


『音楽による時間の使い方3.』


問題は眠れない夜の過ごし方です。


夜中ですからノートパソコンの画面の照明しか有りません、自然に目を閉じて聞く事となりま


す。コンサートではどんなに特等席でも私は殆ど目を閉じて聞いています。時々もったいない


ので演奏する姿(姿勢もチェック!)を目に焼き付ける程度に目を開けます。


目を閉じる事により曲に集中出来ます。音の細部が見えて来て、音の形や色彩までが見えて


来る事も珍しくありません。ヴァイオリンの弦と表板/底板の響きが聞き分けられ、音の伝わ


り方が形を持って見えて来ます。曲の世界に没頭出来る。脳の中は音の、音楽の世界で満


たされるのです。


 


深夜の音楽鑑賞では脳の中で音の世界を築き上げる感性と眠れぬ程の痛さの痛覚が脳の


中で戦います。感性が勝利すれば心穏やかに深夜の音楽鑑賞となるのですが、現実には痛


覚が完勝しました。痛覚は若いナースが用いてくれた座薬の薬効にも負けずに風林火山よろ


しく微動だにしませんでした。感性の力は音楽の様にピアニッシモからフォルテシモの様に連


続的に変化します。美しいメロディラインが流れていればその瞬間はフォルテシモの様に感


性が強まり脳を支配します。曲が単調になったり馴染めない楽曲では感性はピアニッシモと


なり脳は痛覚に支配されてしまいます。


●連続して変化する楽曲の全てを感性がフォルテシモの様に継続出来ない以上、


 連続している痛覚に隙を突かれて断続的に脳を支配されてしまう。


結果として音楽に没頭する事が出来ないので鑑賞を継続する事が出来ない。


 うーん残念!!、音楽情報だけではこの痛覚に勝てないと言う結果となってしまいました。


 



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