2011年11月2日水曜日

日立 Lo-D HS-500

ウッドウイルへの既存製品の改造等の問い合わせで一番多いのは
(国産限定で海外製ビンテージ物は除く)恐らくHS-500であろうと思う。
次に多いのがYAMAHAのNS-1000であり、それ以外は特に見当たらない。


NS-1000はプロが手がけた改造又はレトロフィットの例が無いので
問い合わせる方は遠慮がちである。


HS-500はウッドウイル版HS-500としてのレトロフィットの実績が有り、
その一つは作品例としてホームページに掲載しているので
その記事を見て多くの方からお問い合わせをいただいています。


オークションをウオッチしていても出品されたHS-500が落札されなかった
例を未だ知りません。益々落札価格が高くなっているのが気がかりではあります。


HS-500の仕様等は詳細は下記を見て欲しいが、その背景として
1960年代の日本のオーディオ花盛りの時期、それを支えていたのは
御三家を代表とした中小の専門メーカーでした。
http://www.lcv.ne.jp/~woodwill/new-hs-500.html
http://audio-heritage.jp/LO-D/speaker/hs-500.html


文化住宅などと言う核家族化向けに狭い間取りの住宅が未だ
浸透していなかったのか、それでも狭い日本の住宅には
家具風のステレオと同じく家具風のカラーTVが居間に鎮座していました。
それを更にマニアックにしたのがコンポーネントステレオと呼ばれる
アンプやスピーカーを個々に買い揃えて高品質の音楽鑑賞を楽しむ
と呼ばれる商品群です。


そのマーケットを大手総合電機(電気)メーカーが指を咥えて静観する
訳がありません。日立もその一つで、市場に入って来たその目玉として
全ての商品群に低歪み(Low-Distortion)をうたって来ました。
そうLo-Dです。HS-500はその代表商品でした。


日立の本社工場には博士クラスの技術者が1,000人単位でごろごろしていると。
(工業高校の電気課の担任の先生が教師前に日立で働いていて聞いた話ですから間違い有りません)
その知見をオーディオに集中させたのですからそれは凄い事になります。


そうやって名機HS-500は生まれました。
それが現在も人気を博しているのですからすばらしい事です。
その当時の新婚の先生の月給が3万円程だったそうですから、
HS-500はペアで13万円、かなりの高級機であった事が伺えます。
私などはONKYOの16cmフルレンジ(当時1台2千円?)を自作エンクロで
毎日自宅とバイト先のHS-500を聞き比べしていた訳です。


さてレトロフィットの話ですが。
流石に40~50年前の製品ですのでネットワークのコンデンサー/アッテネーター/
スイッチの接点はほぼ寿命が尽きています。エンクロージャーの硬質ホモゲンと呼ばれる
合板も内部で剥がれていますので大音量で無くともビリ付きや濁りが出てこれも寿命。
これらは止むをません、まっとうに製品寿命を尽くしています。


気になるユニットですが、今迄見て来た物は7割方未だ現役で働いています。
これは驚く事ですね。残念ながら駄目なのは相応の期間未使用で湿気の有る場所に
保管していて磁気回路の駆動部分がさび付いて動かないか重くなっている。
カビが発生して振動板が変質している。使用中にアンプが壊れる等の異常信号で
ボイスコイルが半焼け等などです。


運良く正常なユニットを所持されている方は幸せです。
ウッドウイルで生まれ変わらせる事が出来るからです(大変失礼しました)。
その理由は
.想像ですが開発費の殆どがユニットに向けられその他は特筆する物が無い。
.高音質なネットワーク部品を選択出来る。
.高音質なエンクロージャー材料が選択出来る。
.当時の設計思想に無かったラウンドエンクロージャーを採用出来る。
.HS-500エンクロのダンプドバスレフ方式は小型で豊かな低音を出せるが
スピード感や新鮮な音質が損なわれているのでこれを工夫出来る。


新しく生まれ変わったHS-500は素直で飾りが無くて正直者と言う印象です。
何かの音作りやその様ないやらしさが有りません、やはり日立の社風でしょうか。
その音は現代でも充分に通じる素晴らしいものです。


他のメーカー/機種などのレトロフィットを依頼されて試聴した事も有りますが、
全て良くなると思ってはいけません、正直に買い換えを提案した例が
多くありますのでお間違えの無い様に。


 



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